風邪を引いたからといって、抗生物質を飲む必要はありません。むしろ、飲むことでよけいに体調が悪化する可能性すらあります。
「いやいや、いつも行く医者は抗生物質を出してくれるよ?」
「今までに風邪で抗生物質を何度も飲んできたよ?」
と思われる方もいるかもしれませんが、風邪に抗生物質は効果がないのです。今回は、なぜ抗生物質を飲むと体調が悪化する可能性があるのか、なぜ風邪に効果がないのかを詳しく解説します。
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風邪に抗生物質は効きません!その理由とは
風邪に抗生物質を飲んでも意味がありません。抗生物質を飲んでも効かないからです。風邪を引いたら抗生物質!と高らかに声を上げる方もいますが、残念ながら意味がありません。
その理由を説明します。
風邪の原因は菌じゃなくてウイルスがほとんど
風邪の原因の約90%はウイルスです。ウイルスが体内に侵入して感染することでのどの痛みや鼻水といった症状を引き起こします。
ここでおそらく
「ウイルスが原因なんだったら、抗生物質を飲んだら効くでしょ?」と思う方がいるかもしれません。
しかし抗生物質は菌をやっつけるものであって、ウイルスをやっつけるものではないんです。抗生物質は菌でもウイルスでも、とりあえず小さな病原菌みたいなやつは何でも効くというイメージがあるかもしれませんが、菌には抗生物質、ウイルスには抗ウイルス薬しか効果がありません。
風邪の原因のほとんどはウイルスなのに、菌にしか効かない抗生物質を飲んでも意味がないのは理解していただけるでしょう。
抗生物質は菌にしか効きません。ウイルスをやっつけたいのなら、抗ウイルス薬を選択する必要があります。
風邪の原因となるウイルスの種類が多すぎる
ほとんどの風邪がウイルスによって起こるなら、抗ウイルス薬を飲めば解決!という考えもわからなくもありません。
菌には抗生物質、ウイルスには抗ウイルス薬。そう考えたらウイルスによって引き起こされる風邪に抗ウイルス薬が処方されてもおかしくないですよね。
でも実際は処方されません。
なぜなら、風邪の原因となるウイルスの種類があまりにも多すぎるからです。風邪を引き起こすウイルスの種類はどれくらいあると思いますか?
なんと200種類以上もあるんです。ウイルスの種類によってよく効く抗ウイルス薬は異なります。
ウイルスの種類が多すぎて「あなたの風邪はこのウイルスが原因です」と特定するのは現実的に不可能なのです。
本当に抗生物質は効かないの?とまだ疑っている方へ
実際に抗生物質を処方された経験をもっている方は、とても多いでしょう。私も何度か風邪のときに処方されたことがあります。
しかし、これを見てください。
感冒に対しては、抗菌薬投与を行わないことを推奨する。
(厚生労働省:抗微生物薬適正使用の手引き 第一版)
厚生労働省が風邪(感冒)には抗生物質を使わないように、と言っているのです。
そう、風邪に抗生物質はいらないんです。
抗生物質が効かないならどうやって風邪を治すの?
今まで風邪に効くと思っていた抗生物質が効かないとわかりました。ではどうやって風邪を治したらいいの?何のお薬を飲んだらいいの?
こんな声があちこちから聞こえてきそうです。
風邪を治す方法は
- 体を休める
- 水分をちゃんと摂る
- 栄養補給をする
この3つが1番の方法です。風邪をひくと解熱剤やら咳止めやら使うかと思いますが、それらの薬は風邪を治すものではなく、ただ風邪の症状を抑えているだけです。
むしろ薬を飲むことで、ウイルスが体の外に出るのが遅れて風邪が長引いてしまう可能性だってあります。
風邪に効く特効薬は残念ながらないのです。
ただ、どうしても風邪の症状がつらいときは我慢せずにお薬を飲んでくださいね。体がしんどいままいるのはきついですし、ムダに体力を消耗してしまうことにもつながります。
抗生物質を飲むことで起こりうる副作用
冒頭で私は
結果として私は、本来いらないはずの抗生物質を飲んで大きく体調を崩したこともあります。
と言いました。抗生物質は風邪に効かないどころか、副作用のせいでよけいに体調を悪くする可能性もあるお薬です。
具体的には次のような副作用が出る可能性があります。
胃の不快感や吐き気、嘔吐
抗生物質が体に合わない方は意外と多くいます。私もその一人です。
抗生物質によって胃に負担がかかり、吐き気や嘔吐を伴ってしまうことがあるのです。私はクラリスがとくに合わない体質で、飲むことで強い吐き気を催してしまいます。
風邪で吐き気がするのか、抗生物質で吐き気がするのかわかりにくいこともありますが、具合が悪くなる可能性があるとわかっていて飲む必要はまったくありません。
お腹がゆるくなる
抗生物質は体に悪さをする菌だけでなく、腸内環境を整えている菌まで一緒くたにやっつけてしまいます。
だから抗生物質を飲むとお腹がゆるくなり下痢になってしまうことがあるのです。
風邪に効かない抗生物質を飲んでお腹が痛くなるなんて馬鹿げた話です。
まれに抗生物質が必要なケースもある
ここまで散々、風邪に抗生物質は効かない・必要ないと言ってきましたが、例外的に抗生物質が必要となるケースもあります。
もう一度、厚生労働省の抗微生物薬適正使用の手引き 第一版を見てみましょう。
・成人では、中等症又は重症(※1)の急性鼻副鼻腔炎に対してのみ、以下の抗
菌薬投与を検討することを推奨する。・学童期以降の小児の急性鼻副鼻腔炎に対して、遷延性又は重症の場合には、抗菌薬投与を検討することを推奨する。
簡単に言うと、症状がひどい方には使うことがありますよ、というものです。
- 10 日間以上続く鼻汁・後鼻漏や日中の咳を認めるもの
- 39℃以上の発熱と膿性鼻汁が少なくとも 3 日以上続き重症感のあるも
の - 感冒に引き続き、1 週間後に再度の発熱や日中の鼻汁・咳の増悪が見ら
れるもの
(厚生労働省:抗微生物薬適正使用の手引き 第一版)
厳密に言うと急性副鼻腔炎は風邪ではないのですが、患者さん側は風邪だと思って受診することがほとんど。
上記のような症状がある場合は抗生物質が処方されることがあります。
まとめ
風邪を引いたからって抗生物質を飲む必要はありません。
風邪の原因の90%はウイルスであり、菌をやっつける働きを持つ抗生物質を飲んでも意味がないのです。意味がないどころか吐き気や腹痛などの副作用を起こすことすらあります。
もしも「風邪で病院に行ったのに抗生物質を貰えなかった」のなら、そこの病院はお金儲けに走らずにきちんと患者さんのことを考えている病院です。
ただ例外もありまして、急性副鼻腔炎の方で症状が重い場合は抗生物質が処方されることがあります。
医師が出す薬でも、本当はいらないものもあります。
そのお薬は本当に必要ですか?
必要のないお薬を飲まなくて済むように、正しい知識を持っておきましょう。