「帝王切開って麻酔が切れたら地獄らしいけど、どれくらい痛いの?」
「トイレを往復するだけで10分かかるって本当?」
2021年の某日に熊本の慈恵病院で予定帝王切開を控えていた私は、ひたすら帝王切開の痛みについてネットで検索をしていました。
人によって「意外と痛くなかった」という方もいるようですが、やはり「痛い」という声がほとんど。決して痛みに強くはない私が帝王切開で産んできた体験談をここではご紹介します。
脅すつもりは一切ありませんが、すべて本音です。これから帝王切開を控えている方は参考にしてみてください。
なぜ帝王切開での出産になったの?
厚生労働省が発表している医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況によると、一般病院では約4人に1人が帝王切開で出産しています。
- 多胎妊娠
- 逆子
- 前置胎盤
- これまでに子宮関連の疾患で手術したことがある
など、帝王切開になる理由はさまざまです。私の場合は逆子だったため帝王切開になりました。
帝王切開に決めた理由
逆子だったからといって、絶対に帝王切開で産まないといけないわけではありません。担当医からも「経膣分娩で産むこともできるよ」とは言われていました。
それでも私が帝王切開を選んだのは次の理由からです。
- 逆子の場合は帝王切開で産んだほうが赤ちゃんの安全が確保できる
- 帝王切開だと手術日が決まっているので予定が立てやすい
- 陣痛への恐怖心があった
逆子でも経膣分娩はできますが、足から出てくるため最後に体の中でもっとも大きい頭がつっかえてしまう危険性があります。もし頭がつっかえると赤ちゃんが低酸素状態になり危険な状態にさらされることもあるのです。
「できるだけ赤ちゃんを危険な目に合わさずに産みたい」という気持ちが帝王切開を選んだ大きな理由です。
あとは手術日が決まっているので「夫が仕事で連絡がつかなかったらどうしよう」「産まれる日に仕事を休めないかもしれない」という心配がいりません。
それから、指を切断するのと同レベルな痛みを伴うと言われている陣痛を味わうなら、帝王切開のほうが私はまだ耐えられそう…と思っていたのもあります。
予定帝王切開のはずが緊急帝王切開に
28週から逆子になり、35週の検診でも変わらず逆子のまま。
もう赤ちゃんが子宮の中で回ることもないだろうということで、35週の検診のときに「手術するならこの日とこの日が予約できるけど、いつが良い?」と聞かれました。
「この日なら夫も仕事が休みだし、ちょうどいいか」ということで手術の予約をしたのですが…、なんと最後の検診を受けに行ったその日に緊急帝王切開となってしまいました。
「お腹の張りが気になる」と相談したところ張りを計測する機械をお腹につけられ、そこでまさかの「陣痛が来ていますね」と言われてしまったのです。
陣痛といってもまだ7~8分おきに張っているだけで、痛みは鎮痛剤を飲まなくても大丈夫なレベルの生理痛くらい。
「逆子なのでこのまま陣痛が強くなってくると危ないから家には帰せません。このまま入院してください」と看護師に言われ、入院バッグも陣痛バッグも何も手元にないまま入院となりました。
当初は「入院」とだけ言われていたのですが、担当医の判断によりそのままオペすることに。検診が終わった3時間後くらいにはお腹を切られ娘が爆誕していました。
【術中編】慈恵病院で帝王切開!手術当日の流れ
「今日娘が産まれるって本当かよ…、今から手術ってマジかよ……」と思いながら分娩室へ連れて行かれる私。手術前の準備から産まれるまでの流れはだいたい次のような感じでした。
付き添いの人に来てもらう
帝王切開の手術は、付き添いの人に待っていてもらわないといけないそうです。本来なら夫に来てもらうはずだったのですが、仕事中で何度連絡してもつながらなかったため、急遽わたしの母に来てもらいました。
手術の同意書など書類へのサインを済ませ、担当医が来るまでに着替えたり点滴のルートを取られたりしながら分娩室で待ちます。
分娩室から手術室へ移動し麻酔される
担当医の準備が整ったとのことで、歩いて手術室まで向かいます。
手術台の上にあがるとすぐに「今から麻酔をいれるよ」と言われました。以前、ひざの手術をしたときに脊椎麻酔をした経験がある私は「背中から刺した針がお腹から出てきそうなくらいの痛みをまた味わうのか」と心臓がバクバクしたのを覚えています。
しかし麻酔を入れる前に痛み止めを背中に数カ所刺してくれたおかげか、麻酔の注射は思っていたよりかは痛くありませんでした。(痛いには痛いですが余裕で耐えられます)
いつの間にかお腹を切られていた
麻酔が効いてきたことを確認したら、隣にいた看護師さんとおしゃべりタイム。
「性別は聞きました?」
「体重は何グラムくらいって言われてました?」
など話しているうちに、気がついたらお腹を切られていました。「今から切るよー」など声かけが一切なかったので「え?切ってたの?」という感じです。
看護師さんがずっとニコニコ笑顔で話しかけてくれるので、切られていることにまったく気づきませんでした。
渾身の力でお腹を押される
「ちょっとお腹を押すからね」と言われ、ものすごい力でお腹を押されます。胃が口から出てきそうなくらい本当に苦しくて、「うぅ…」と声が漏れてしまうほどです。
どれくらいの時間押されていたかは覚えていませんが、術中はこのお腹を押されている時間が1番苦痛でした。
ついに娘が爆誕!
全体重をかけてお腹を押され、あまりの苦しさに唸っていた私の耳に「もうすぐ産まれますよ!」との声が聞こえてきました。
私の顔の真横に時計が置かれます。出生時間を記録するためなのでしょう。
ある瞬間にふと赤ちゃんで圧迫されていた胃と肺が楽になるのを感じました。きっとこの瞬間に赤ちゃんが取り出されたのだと思います。
しかしすぐには「産まれましたよ!」とは言われません。何をしていたのかまったく見えなかったので詳しくはわからないのですが、赤ちゃんを拭いたりして泣き声をあげたところでようやく「元気な赤ちゃんですよー!」と言われました。
その後すぐに私の横に赤ちゃんを連れてきてもらい、娘と対面です。
起きておくか眠るかの選択をさせられる
娘が産まれた後は、切ったお腹を縫っていく作業に入ります。このとき「今から傷口を縫いますけど、麻酔で眠っておきますか?それとも起きたまま縫合に入りますか?」と聞かれました。
「麻酔で眠る」という経験を今までにしたことがなく怖かったので、私は起きておくほうを選択。塗ってもらっている間も看護師さんとおしゃべりして過ごしました。
【術後編】慈恵病院で帝王切開!手術後の流れ
手術が終わった後は麻酔が効いているので自分の足で歩くことはできません。そのため動くベッドのようなものに乗せられて病室へ運ばれます。
ちなみに慈恵病院では出産後はマリア館で過ごすことになっていますが、帝王切開の場合は最初の数日だけは本館です。
麻酔の副作用で体がガタガタ震える
娘が産まれる直前くらいから体が震えだしました。意図せずガタガタ震える体に「なにこれ?私どうしたの?」と最初は思っていましたが、すぐに麻酔の副作用だと気がつきます。
「麻酔で体が震えた」という先輩ママの声を聞いていなければ、おそらく「え?このまま死ぬ?死ぬの?」と思っていたかもしれません。
それくらいガタガタ震えます。
コロナの影響で面会は15分のみ
2021年の2月時点で、慈恵病院では出産後の面会は付き添っていた1人のみ。さらに15分だけという制限つきでした。
てっきり「産まれた娘と私と付き添い人(私の場合は母)」の3人で15分過ごせるのかと思いきや、「私と付き添い人」の2人だけでした。
付き添いで来ていた母は、一応娘と対面できたようですが手術室から新生児室へ運ばれていく途中でほんの数分見ただけのようです。(見るだけで抱っこはできなかったと言っていました)
麻酔が切れ始めて痛みが襲来
「麻酔が切れてきたな」と感じたのは、手術室を出るときです。完全に切れたなと感じたのは翌日起きてからでしょうか。
少しずつ麻酔が切れて痛みが襲ってきているのに1時間おきに子宮の戻りを確認するために看護師さんからお腹をグリグリ押されて地獄でした。
帝王切開の翌日(1日目)は痛みでまったく動けない
朝、目が覚めると身動きがまったくできないほどの痛みに襲われます。「声を出すだけでお腹の傷が痛くてしゃべれない」ほどの痛みです。
「このままでは家に帰せません」と言われたときから翌日朝まで絶食でしたが、痛みのあまり食欲はまったくありません。
お昼にはほぼ液体のおかゆが出されました。
お昼ご飯が終わると、なんと帝王切開の翌日にもかかわらず歩行練習です。歩かされます。お腹に力を入れないように腕の力でベッドから起き上がろうとしても激痛でなかなか起き上がれませんでした。
ベッドのリクライニングを最大限に活用しても痛くて痛くて…やっと起き上がれたと思ったら座っているだけで眩暈がひどく立ち上がれませんでした。
帝王切開から2日目で病室を歩く練習
1日目はあまりの痛さに立ち上がることしかできませんでしたが、2日目はなんとか数歩だけ歩けました。といっても点滴の台に身を委ねながらでなんとか、という感じです。
こんなに痛いのに、この日から授乳の練習が始まりました。新生児室まで歩くことはできないので、授乳の時間に娘を病室まで連れてきてもらい、看護師さん(助産師さん?)の指導のもと授乳です。
まず、授乳クッションを腰回りに置かれるだけで激痛。ちょうど傷口にあたるので可愛い娘が目の前にいるのに少しの笑顔も出せませんでした。
授乳を始めると子宮が収縮してこれがまた痛い痛い…。
帝王切開から3日目で尿道カテーテルが抜かれる
自力でトイレに行けないため、手術が始まる前から尿道カテーテルを入れていました。入れるときは麻酔がかかっていたので違和感があるくらいでしたが、抜くときは「いたっ…」と声が出るくらいには痛かったです。
実は術後2日目には「尿道カテーテルどうする?抜く?」と看護師さんから聞かれていたのですが、どう考えてもトイレに行ける気がしなかったのでそのままにしてもらいました。
3日目には抜かないといけないようで、抜くかそのままかの選択肢はなく抜かれます。トイレのたびに涙目になりながらベッドから起き上がり点滴台をつかんでなんとか便器に座り……痛みのピークは2日目で過ぎてはいたもののまだまだ地獄の痛さです。
ただ、この日からどうにかこうにか自分でお風呂に入れるようになります。(尿道カテーテルを抜くまではお風呂に入れません)
帝王切開から4日目で物に捕まらず歩けるようになる
これまでは点滴台に捕まりながらでないと歩けませんでしたが、なんとか(本当になんとか)何かに捕まることなく歩けるようになりました。
とはいえ歩行スピードは亀です。足を持ち上げると傷口が動いて痛いので忍者のようにすり足で歩いていました。
帝王切開から5日目でマリア館に移動
慈恵病院には本館とマリア館の2つがあり、本館は古い建物でベッドにはリクライニング機能がついています。マリア館は新しくできた建物で病室はまるでお高いホテルのようなところ。
経膣分娩の方は初日からマリア館に入院するのですが、帝王切開の場合はベッドのリクライニング機能がないとまったく身動きが取れないため最初の4日間は本館で過ごします。
体の回復具合によって前後することもあるようですが、基本的には5日目からマリア館に移動するそうです。
帝王切開から6日目で母子同室開始
まだまだ傷口が痛すぎてしんどかったのですが、ほかのママ達が母子同室をしているのを見ているとなんだか自分が楽をしているような、甘えているような気分にどうしてもなってしまいました。
無理して母子同室にしなくてもよいと言われていたものの、この日から始めてみました。体への負担が増えるだろうなと思っていたのですが、我が子が目の前にいるとなぜだか心が安らぎむしろ楽に。
帝王切開から7~9日目
7日目の夜からはその日の体調次第で夜間に預けたり預けなかったりとしていました。退院したら数か月はまともに寝られない生活が待っているので、今のうちに休めるときは休んでおこうと思ったからです。
この頃になると、だいぶ歩けるようになりました。といっても、相変わらず腕の力を120%以上使わないとベッドからは起き上がれません。
歩いているときもゆっくり一歩ずつです。
まだまだ痛みがつらいままでしたが、9日目のお昼頃に退院しました。帝王切開後、初めて車に乗ってわかったのが、車の振動で傷口がめちゃくちゃ痛いということ。
ちょっとした振動でも顔をしかめてしまうほどの痛みがありました。
退院してからの生活は……?
退院してからも相変わらず腕の力を使わないとベッドから起き上がれません。最初の2週間くらいは娘が泣いて起きても私がすぐにベッドから起き上がれないので、夜寝れないことよりもベッドからすぐに起き上がれないことのほうが苦痛でした。
痛みはあるものの、腕の力に頼らず起き上がれるようになったのは1か月くらい経ったころでしょうか…。ただ、1か月経っても車に乗ったときの振動はまだまだ傷口に響いていました。
シートベルトが傷口に当たるのも痛かったので、しばらくは自分で車を運転することもできず。。洗濯物を干そうと腕を上に上げたら傷口が引っ張られて痛く、夫に「痛くて干せない(泣)」と言って洗濯物も頼んでいました。
退院から2か月になる前には自分で運転できるようになり、振動による痛みもほぼゼロでした。ただ、ちょっと当たるだけでまだ痛みは少しあります。
4か月くらい経つと、ほぼ出産前と同じような日常生活を送れるようになりました。といっても、ふとしたときにズキズキ痛むことはまだまだあります。
帝王切開後、経膣分娩をしたかったと思った理由
「陣痛の痛みより帝王切開の痛みのほうが耐えられる気がする」と思っていた私ですが、いざ帝王切開で出産してみると日に日に「経膣分娩で産みたかった」という気持ちが高まってしまいました。
周りのママたちと自分を比べて憂鬱になる
経膣分娩で産んだママたちのほとんどは、スムーズに歩いて授乳をこなしていました。(もちろん会陰切開をされたであろう方は痛そうに歩いていましたが…。)
一方で私はというと、歩くことすらままなりません。コット(赤ちゃんを乗せている動くベッドのようなもの)を押してなんとか授乳室に行くも、傷が痛くて赤ちゃんを抱っこできない。でも抱っこしないと授乳できないので、なんとか抱えて授乳していました。
授乳クッションが傷口にちょうど当たり、さらに授乳の刺激で子宮が収縮するので本当に授乳が苦痛です。授乳が終わっても痛すぎてどうやって椅子から立ち上がったらいいのかわかりません。
普通に赤ちゃんを抱っこして授乳して、終わったら涼しい顔でコットに戻している周りのママたちを見ると自分の体が思うように動かなすぎて憂鬱でした。
産後の回復が遅い
「陣痛は痛みの一括払い、帝王切開はリボ払い」とどなたかが例えていましたが、まさにこの通りです。陣痛ほどはおそらく痛くないのだと思いますが、痛みに耐える期間は圧倒的に帝王切開のほうが長くなります。
退院後も痛みが強く、今までのような生活は送れません。痛む傷口に耐えながら毎日を過ごしていると「いつになったら元通り、痛みを気にしなくていい生活を送れるの?」とどうしても思ってしまいます。
経膣分娩をしてみたかったという思いが心の片隅にある
帝王切開は母胎を赤ちゃんを守るために必要なものです。慈恵病院の医師によると、経膣分娩と比べると母胎の死亡率は3倍になるそうですが、赤ちゃんを安全に産むためなら帝王切開でも構いません。
逆子の状態で経膣分娩をしようとすると、頭が最後に出るのでつっかえて酸素不足に陥ったり、臍帯脱出といって臍の緒が先に出たりする可能性があります。
臍帯脱出になると、臍の緒が出て20分以内に赤ちゃんを出さなければ命に関わるそうです。
赤ちゃんを危険にさらすくらいなら…と思い帝王切開を選びましたが、やはり心のどこかに「経膣分娩を経験してみたかった」という気持ちが残ってしまいました。
一度でも帝王切開をすると、次の出産も基本的には帝王切開です。しかも私は2人目を考えていないため、もう出産をすることはありません。
不快に思われる方もいるかもしれませんが、「経膣分娩ってどんな感じなんだろう?」「陣痛ってどれくらい痛いんだろう?」と、自分が体験できなかったことに対して心残りがあるのです。
まとめ
帝王切開は麻酔が切れてからが本当に辛い日々が続きます。痛くて痛くてたまらないのに歩行練習が始まり授乳が始まり、母子同室が始まり……。
ベッドにリクライニング機能のないマリア館に移動してからは、あまりの痛さに病室で一人ボロボロと泣いて過ごしていたほどです。正直いって、もう2度と帝王切開はしたくありません。
しかし、日に日に成長していく娘を見ていると「あのとき頑張ってよかった」「無事に生まれてきてよかった」と自然に思えます。経膣分娩にしろ帝王切開にしろ、出産は痛みを伴うものなので、私はこういう運命だったんだと受け入れています。
大丈夫です。時間はかかりますが、帝王切開をしても元のように体を動かせる日が必ず来ます。